女優の吉高由里子が主演するＮＨＫ大河ドラマ「光る君へ」（日曜・後８時）の第３４回「目覚め」が８日に放送される。Ｋ大へ道も第

　大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。河光回み走っ て くる大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、る君１０００年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部／まひろの生涯に迫る。長の１日に放送された第３３回「式部誕生」は、ズ褒ンまひろ（吉高）が藤壺で本格的美＆に女房として出仕し、「源氏物語」執筆へギアを上げていく様子が描かれ、の伏初回から丁寧に張られてきた伏線が怒涛（どとう）のごとく回収されていく“胸熱”回だった。収に

　まひろは藤壺では父・為時（岸谷五朗）にちなんだ「藤式部」を名乗ることになり、穏な「光る君へ」のオープニングクレジットもこの回から「まひろ／藤式部」に。展開走っ て くる女房仕えをしながら物語の続きを書こうとするが、ＮＨサプライタイトルジー３４どころ宮中での暮らしに慣れず、Ｋ大へ道も第筆が進まない。河光回み

　まひろ先生の原稿に「光る君」という筆文字が初めて登場した夜。る君女房たちがフリーダムに眠る局（つぼね）を俯瞰（ふかん）で撮っていくカメラワークは新鮮だが、当のまひろは慣れない環境に困惑しきり。一条天皇（塩野瑛久）を藤壺に向かわせる最後の一手としてまひろを留め置いていた道長（柄本佑）の反対を押し切り、家に戻って執筆することを決める。「内裏でさまざまなことを見聞きし、物語の糧にするとも申しておった！」とむくれる道長の「た！」が実にかわいらしい。

　出仕直後に紫式部が里下がりしたのは史実とされており、里下がり中に詠んだ和歌なども残されている。理由は諸説あるが、今作のまひろに限っては“書くため”の里帰り。筆者は家でも喫茶店でも公園のベンチでも移動中のタクシーの車内でも原稿を書ける無頓着なタイプで、まひろ先生とは真逆なのだが「物語は書きたい気持ちの時に書かねば、勢いを失います」には全く同感である。アプローチは違えど、登る山は一緒の人がいるのだと思うとちょっとうれしい。

　里下がりのため、中宮・彰子（見上愛）にあいさつに訪れたまひろは「冬が好き」「（薄紅色より）空のような青が好き」と、秘められた本心を知る。感情の発露が少なく、ぼんやりしている（ように見える）彰子だけれど、知れば知るほど味の出るスルメ系女子であることがこの短いせりふのやりとりから伝わってくる。続きを書き終え、参内したまひろは、彰子から「帝がお読みになるもの、私も読みたい」とせがまれ、物語の主人公について言及する。

まひろ「あまりにも美しかったので、光る君と呼ばれました」

彰子「光る君…」

　文字の中の世界から解き放たれ、「光る君」が読者のなかで動き出した瞬間。実に美しいタイトル回収である。まひろは中宮の心の内に潜む感情の理解者であるべく、藤壺に腰を据えて物語の続きを書くことを決意する。

　帝から物語を評価されたまひろに、道長が「褒美」として贈ったのは世界にただひとつだけの扇。第１回、初めて出会ったころの幼少期のまひろと道長（三郎）が描かれていた。まひろの着ていた着物の柄までも完全再現され、あのとき逃げた鳥までも、扇の中に生き生きと残されている。記憶力よすぎる道長くんのロマンチックなはからい。第１回放送直後の当コラムでも触れたが、２人の出会いは源氏物語の第５帖「若紫」のオマージュと推測されるので、文学ファン的には涙を禁じ得ない描写だった。

　なお、回収という意味では公任（町田啓太）、斉信（金田哲）にまひろが放ったイヤミ「私のような地味でつまらぬ女は、己の才を頼みとするしかございませぬ」も意趣返しできてお見事。文字数の関係で元ネタシーンは割愛するが、初回から欠かさず見てきた視聴者だからこそ楽しめる面白ポイントをこの後半戦で味わっている。

　まひろの物語執筆と並行して、伊勢守の任官をめぐる妙な動きや、伊周（三浦翔平）の暗躍によって政もかなり不安定に。そんな中で放送される第３４回は、前回のラストシーンの続き、興福寺の僧らが都に押し寄せ、朝廷に要求を突きつける非常事態から始まり、収拾に奔走する道長の葛藤が描かれる。合戦シーンがない平安大河とは言いつつも、好戦的な登場人物は一定数いるもので、民を思う道長との溝はけっこう根深そう。争いがしたい公達衆や僧たちにはぜひとも「鎌倉殿の１３人」を見てもらって、約２００年後の未来に訪れる魑魅魍魎（ちみもうりょう）を予習しておいてほしいものだ。

　宮中パートでは、まひろの物語は宮中の話題を集めるが、狙いである一条天皇と中宮の関係は深まらず、彰子の懐妊はほど遠い。さらに都で病や火事など、不吉な出来事が続いたため、道長は一世一代のある決断をする。そんな中、天皇がまひろを訪ねてきて…という展開が繰り広げられていく。道長の成長した嫡男・頼通（渡邊圭祐）も本格登場。事態が動く前触れのような空気が物語を通して漂っている。（ＮＨＫ担当・宮路美穂）

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